当院の入れ歯治療の方針
入れ歯を作製する場合の手順として、
- おおまかな型をとり、個人用のトレーをつくり、
- 精密な型を取った後、
- かみ合わせを決め、
- 歯をならべ試適をして
- 完成
という段階をふみます。できるだけ丁寧にしても、いまだに石膏模型をつくりワイヤーを曲げ、ワックスで歯肉を形成し、加熱して樹脂を流し込む、というアナログな手法ですので、いたるところで誤差がでます。
その誤差が痛みの原因になる場合が多いのです(入れ歯の辺縁が歯茎にあたったり、残している歯を圧迫したり、かみ合わせがあわなかったり)。
しが歯科ではその誤差をできるだけなくすため、各段階で点検・修正し、技工士さん側とコミュニケーションをとりながらできるだけ精密に製作しているのです。(もちろん3D技術を使いスキャナーでコピーする最新の方法も導入しています:自費)。
保険制度はご存知のように使う素材が限られているため、どうしても分厚かったり、ワイヤーが見えて見栄えが悪かったりします。
保険の入れ歯がどうしても気に入らない場合、その弱点をなくすいくつかの方法があります。
例えば、ノンクラスプ金属床は裏面が薄い金属でできていて、またワイヤーが前歯になく特殊なレジンを使うため入れ歯だと気づかれません。
また顎の骨が薄い方は柔らかい素材を裏打ちし、快適に噛める入れ歯を作製できます。
まずはご自分の入れ歯のお悩みをご相談ください。
入れ歯の設計について
奥歯が2本欠損している場合
図Aのように上顎の左上奥歯2本を失った場合、通常は図Bの入れ歯を設計します。しかし、嘔吐反射が起こる・舌が回らない・発音に支障があるといった場合には、図Cの設計へと変更します。片側だけで作ることで、上記の症状がずいぶん抑えられます。ただ、慣れると図Bの方がしっかりと食事ができるため、判断には慎重を要します。
入れ歯でもっとも大切なのが「動かないこと」です。浮いたりズレたりすると、擦れて痛みが出ます。また、金属のバネがかかる歯を揺り動かし、その歯の寿命を短くしてしまいます。
「動かないこと」を考えると、薄くたわまない金属材料が理想と言えます。
上顎の前歯6本だけ残り、
奥歯がすべて欠損している
場合
図Dは、前歯6本だけが残った上顎です。この場合、下の図Eのような設計にすると、入れ歯がぴったり吸着し、しっかり噛めることが予想できます。
入れ歯を使い慣れている人であればこれで良いのですが、入れ歯が初めてという方の場合、異物感が強くなることがあります。
こういった場合、下の図Fの設計を検討します。金属面積が減り、舌の先を前歯の裏側に当てられるため、発音(タ行など)がしやすくなることが期待できます。
ただ、図Fの入れ歯だと、えづきやすいということがあります。その場合、下の図Gを検討します。発音時には舌の先が金属部分にあたりますが、えづきが起こりにくくなります。
このように、同じ歯の欠損であっても、入れ歯の設計にはさまざまなパターンが考えられます。口・舌の動かし方、また異物感には個人差があるため、「どの入れ歯が一番良い」とは言い切れません。
当院では、体験用の仮の入れ歯の床をお作りし(1つ3,300円)、1週間ほど試用していただいた上で、最終的な設計を決めるということが可能です。
バネのまわりや、入れ歯の内側に食べかすがよく詰まる場合
下の図Hは、金属のバネと残存歯のあいだに隙間がある状態を表しています。この場合、隙間には食べかすが頻繁に挟まります。食べかすが気になるかどうかは人によって異なりますが、気になる場合には図Iのように、隙間を解消する必要があります。