入れ歯治療の方針
私たち歯科医もその瞬間は少し緊張しますが、装着したばかりの入れ歯は、少なからず、違和感があるでしょう。
だいたい平均して2.3回は、調整したりしますが、 痛みがあるところや、かみ合わせを確認して、1か月経ってもまだ違和感がある場合、 ①設計 ②材料 ③根本的なかみ合わせ に問題があるかもしれません。 それぞれの場合について、解説します。
入れ歯の設計について
上顎の入れ歯の場合、右と左をつなぐ金属のバーの位置がしっくりこない場合は、設計を変更します。
図Aのように上顎の左上奥歯が2本失ったとき、図Bの設計で入れ歯をつくるとしっかりしますが、おえっとえずいたり、舌がうまくまわらず、発音が上手にできない場合があります。
下記に示した図Cのように片側だけで製作すると、ずいぶん楽になります。
図Bのほうが慣れればしっかりと食事はできるのですが、図Cの形の入れ歯を製作する場合が多いです。
入れ歯はとにかく動かないのが一番よいです。
浮いたり外れやすければ擦れて痛みがでたり、食渣が入れ歯のなかにはいるだけでなく、金属のバネがかかっている歯を揺り動かしてその歯を悪くしてしまいます。
動かず、吸着の良い、ひっかける歯を悪くしない入れ歯をつくるためには、薄くてたわまない金属材料がいちばんよいのです。
図Dは上顎の前歯6本だけ残り、奥歯をすべて失った人の模式図です。
前歯6本の強固具合にもよりますが、たとえば図Eのような設計にしたとします。
入れ歯になれた人ならば大丈夫かもしれません。
一番しっかりしているので、入れ歯もぴったり吸着して噛む能力は良いとかんがえられます。
しかし初めて入れ歯をいれられる方の場合、少ししんどいかもしれませんね。
図Fの設計はどうでしょう。
上顎の奥のほうは顎の骨がやせにくいといわれていますし、特に「た行」を発音するときには舌の先端を前歯の裏側に当ててしゃべりますので、そこが空いているのはメリットが大きいです。
ただ、えずきやすい人にはむいていません。
では図Gはどうでしょう。
上顎の大部分がすっきりして、話しやすそうですね。
えずくことも少なそうです。
この場合、「た行」の発音の際、舌の先端は入れ歯の金属で覆われた部分に当てて発音することになります。
実は、図Fが向いている人と図Gの設計が向いている人がいるのです。
顎の深さや舌の習慣的な動かし方が人によるので、一概にどちらが良いとはいえません。
その場合は、体験用の仮の入れ歯の床を製作し(1つ3,300円)、一週間ほどどちらがよいかためしていただきます。
バネのまわりや、入れ歯の内側に食べかすがよく詰まる場合
残っている歯の数や位置によりますが、すきまのない設計にします。
図Hの場合、金属のバネと自分の残っている歯の間にすきまがあります。
この場合、食事のときにお茶や水を飲んで食渣が流れればよいのですが、意外と食べかすがたまって気持ち悪い人がおおいのです。図Iのようにすきまをなくしてしまうと、食渣が停滞せずにすみます。